子ども食堂取材 オノハワイアン(愛知県瀬戸市)

団体名オノハワイアン
開催日時定休日(火曜と第1・第3水曜)以外の午前11時半~午後10時
場所瀬戸市上松山町1の17
対象者小学生以下。予約不要
電話番号0561―78―1752
費用200円
メールtakako@ono-hawaiian.com
代表 羽場孝子さん

▼飲食店が思い立って即実行

 ハワイ好きの夫婦がハワイ風料理を提供する「カフェ and キッチン ONO Hawaiian (オノハワイアン)」は、店の営業時間中に小学生以下の子どもにカレーライスを200円で提供し、お代わりも自由にできるようにしている。見方によっては、一般のファミリーレストランで安価に提供される「お子様セット」「キッズプレート」などと似たサービス手法だが、夫婦はこの取り組みを「子ども食堂」と位置づけ、一層の利用を呼び掛けている。

 羽場(はば)貴彦さん(62)と孝子さん(59)夫妻は、ハワイに過去15回超も旅行するほどのハワイファン。「ハワイ全体がパワースポットで、行くといつも癒される」と孝子さんは魅力を語る。孝子さんが2014年に起業塾に通って飲食店経営のノウハウを学ぶなどし、翌15年10月末に同店をオープンさせた。その後に、勤務先を退職した貴彦さんも店に携わる。ココナッツミルクを加えた「ハワイアンカレー」や「ロコモコ」「ガーリックシュリンプ」などの食事を提供し、ポーチなどハワイの雑貨も販売する。

「ハワイアンカレー」をつくる孝子さん

 子ども食堂は貴彦さんが突然思い立った。20年3月、新型コロナ拡大で雇用不安が広がり、若い世代を中心に困窮問題が深刻になっていることをニュースで知ったのがきっかけ。夫妻は子ども食堂の存在は前から知っており、できる範囲で無理なくやろうと考え、ニュースを聞いたその日のうちに食堂の開始を伝えるポスターを手書きして店のガラスに貼った。

 店のフェイスブックなどSNSで子ども食堂の活動をアピールしているが、利用する子どもは1日平均2~3人、多い日でも7~8人と少なく、ゼロの日もある。それでも、貴彦さんは「月1回の開催で計数十人に食事を提供する子ども食堂が多い中で、1か月累計にすればうちの提供数は見劣りしない」と自負する。孝子さんは「子どもが『おいしかった』と笑顔を見せてくれるとうれしくなる。もっと気軽に来てほしい」と利用を呼び掛ける。

店の厨房で調理をする羽場夫妻(2023年2月13日撮影)
「子ども食堂」として安価で提供される「ハワイアンカレー」。ジュースも付く

 大抵の子ども食堂は開催日時が限られているが、ここは火曜と第1・第3水曜の定休日以外の営業時間なら、いつでも食べられる長所がある。大人のカレーは税込み900円するのに対し、小学生以下は小盛りだが200円となり、お代わりすれば腹いっぱいになる。敷居が高いと感じるのか、子どもだけの来店はまれで、大抵は子ども連れの客に羽場さん夫婦が「子どもさんは200円でカレーが食べられます」と持ち掛けて注文を取ることが多い。

 ボランティアに手伝ってもらったことはなく、夜にアルバイト一人に来てもらっている。店の営業と子ども食堂とのすみ分けができず、ボランティアに頼るわけにいかないのだ。寄付が寄せられることは少なく、子ども食堂の食材費もほぼ自前だが、今のところ、負担に感じていないという。「200円のカレーを子どもさんに提供することで、その親など大人の客が増える期待もある」と貴彦さんは話す。店のホームページで子ども食堂応援を求め、特製のステッカー(500円)やマウスパッド(3000円)を店内に並べて、売上金を子ども食堂の運営資金にあてる工夫もしている。飲食店が低額や無償で食事を提供する「子ども食堂」は最近、全国で増えつつある。「うちは、たいしたことはできないが、無理せずに長く続けたい」と孝子さんは抱負を語った。(23年2月13日取材。文中の年齢は取材時点)

店内で販売中のハワイの雑貨を見るのも楽しい
オノハワイアンで「ハワイアンカレー」を食べる子どもたち
店の入り口の横に「こどもしょくどう」を知らせる張り紙が出されている
特製のステッカー(下)やマウスパッド。売上金は子ども食堂の活動資金にあてられる

<執筆者プロフィール> 野矢 充(のや・みちる) 滋賀県甲賀市出身。立命館大学法学部卒業後、30年間読売新聞記者。退職後に名古屋市立大学大学院人間文化研究科博士前期課程修了。現在、名古屋市在住。2021年夏からフードバンク愛知のホームページで「子ども食堂レポート」執筆。著書に「ごみ:拾って楽しめ」(日本語版と英語版)、論文に「憲法改正の国民投票に新聞はどう向き合っているか─朝日・毎日・読売の比較から」(名市大大学院紀要に掲載)がある。