子ども食堂取材 ぷちの輪おてら横丁(愛知県西尾市)

団体名ぷちの輪おてら横丁
開催日時毎月第三日曜日午前9時~正午
場所西尾市上町下屋敷47、正念寺隣接の空き家
費用子どもや学生は無料、学生を除く18歳以上は300円
メールアドレスpuchinowa@gmail.com

代表 平田妙子さん

▼子どもも調理に参加して輪を拡大

 元看護師で現在は会社の代表をしている藤原直子さん(53)(安城市)=ぷちの輪おてら横丁前代表、現副代表=は、西尾市上町の正念寺隣にある空き家を借り、2020年3月から第三日曜日に「体験型子ども食堂」を開いてきた。子どもも大人も午前中に予約なしで料理づくりに参加でき、昼が近づくと、出来上がった料理から各々が自由に皿に料理をとって味わう。初参加であっても、調理体験を通して世代間交流ができるのが特色となっている。

 藤原さんが子ども食堂を始めたのは、看護師をはじめとした経験がベースになっている。自身の出産・育児期間を除いてクリニックなどで長年看護師を務め、多世代で助け合える地域交流の場が必要との思いを持った。17年には自らが碧南市に会社を設立し、翌年3月から発達が心配な子どもの通所施設を始めた。ほぼ同時期に地域の人たちの交流の場として、土・日曜日に革細工や着付け、フラワーアレンジメントなどのワークショップの場を同市で企画したこともある。ただ、活動に入りづらいのか、参加者は数人と少ないままだった。

 場所を変えて参加者の増加を目指すことにし、19年に現在地の空き家を寺から賃料なしで借りられることを知った。掃除をし、机などの備品を置き、同6月からワークショップの場にした。その後、仲間の女性が子ども食堂をやることに意欲的だったこともあり、「地域の人が集う子ども食堂に切り替えてもよいと思うようになった」と藤原さんは経緯を語る。「寺の横にある輪の集まり」を意味する食堂名を付けた。

「ぷちの輪おてら横丁」をつくった藤原直子さん

 20年の食堂スタート時から、料理づくりは子どもも参加できるようにした。今の子どもの多くは家で料理を作らないと感じていたという。「包丁が危ない、子どもに料理をやらせるのは大変、と感じるお母さんが多く、母親はつい口を出してしまいがち。他の大人なら子どものやることに寛容で、些細なことでも子どもをほめることができ、子ども自身もうれしくなって自信が持てる」と、子どもの調理参加を取り入れた理由を藤原さんは説明する。

厨房でランチを調理する参加者たち(2023年8月20日)
小さな子供も包丁で卵焼きのカットを体験

 8月20日の開催日にも18人の子どもと24人の大人が参加し、ゴーヤーチャンプルーや冬瓜の煮物、キュウリの和え物、チヂミなどの料理を手分けして作った。参加した碧南市在住の小学6年女児(11)は、父親に何でもチャレンジすることが大事と勧められ、母親に送迎してもらって初参加したという。「家でも料理を手伝ったことがあるので、きょうはジャガイモの皮むきができた。多くの人たちと料理を作るのは楽しい」と話していた。

 地域の子ども食堂なのだから、代表者は地域に関わりの深い人がよいと藤原さんは考え、西尾市内に職場があり22年夏から活動に参加してきた平田妙子さん(63)(碧南市)に23年5月から代表に就いてもらった。平田さんは「皆とやれば踏ん張れる。時間を共有して楽しい食堂でありたい」と語っている。(23年8月20日取材。文中の年齢は取材時点)

大人と子供が入り混じって調理を行う
献立は集まった食材で決める。写真は8月20日のゴーヤ―チャンプルー
チヂミを焼く参加者。出来上がり次第、ほかの参加者たちにも配る
玄関の外でかき氷を作る参加者。
猛暑日とあって、ほとんどの参加者が味わった
和室で遊ぶ子どもらにおにぎりを配布する参加者

<執筆者プロフィール> 野矢 充(のや・みちる) 滋賀県甲賀市出身。立命館大学法学部卒業後、30年間読売新聞記者。退職後に名古屋市立大学大学院人間文化研究科博士前期課程修了。現在、名古屋市在住。2021年夏からフードバンク愛知のホームページで「子ども食堂レポート」執筆。著書に「ごみ:拾って楽しめ」(日本語版と英語版)、論文に「憲法改正の国民投票に新聞はどう向き合っているか─朝日・毎日・読売の比較から」(名市大大学院紀要に掲載)がある。