子ども食堂取材 じゅうしやまこども食堂(愛知県弥富市)

食堂名じゅうしやまこども食堂
開催日時23年度は毎週火曜日午後3時半から。24年度は月1回予定
場所23年度は弥富市神戸4丁目26番地の拠点施設など。24年度は未定
費用18歳までの子ども無料
電話番号090-5110-0977(山洞さん)
メールアドレスyatomi.kodomo@gmail.com
その他各年度で活動内容が変わる可能性がある
代表 山洞知里さん

▼食料宅配から始めて子ども食堂を軌道に

 弥富市は旧弥富町と旧十四山村が合併して誕生した。その十四山村だったエリアに活動拠点を置く子ども食堂だ。薬剤師の夫や男児2人と市内に住む山洞(さんどう)知里さん(38)が2020年に運営主体「NPO法人はぐくみ」を設立して代表理事に就き、紆余曲折を経て21年3月から月1回、自らマイカーを走らせて野菜など食料を入れた段ボール箱を十~二十軒の希望世帯に無料で届ける形の「子ども食堂」を軌道にのせた。コロナ禍が下火になってからは、利用者に手作りの弁当を取りにきてもらう形に変えた。

弥富市にある「NPO法人はぐくみ」の活動拠点

 活動拠点は、父が営む運送会社が所有する3階建てビル。母の児玉日佐美さん(64)がこの建物で営んでいたデイサービス事業を19年で終了したため、母の事業を手伝っていた山洞さんが、空きスペースを活用して20年12月から学童保育事業を計画した。しかし、コロナ禍で市民に外出を控えるムードが広がり、利用者が集まらずに大失敗。NPO法人はぐくみの当初の定款に学童保育以外に子ども食堂運営を書き入れていたこともあり、コロナ禍でこそ地域に貢献できることをやろうと、感染抑制を考慮した「宅配型」を思いついた。

 「ありがたいことに、家族の支えで生活できる環境があり、短い人生、やりたいことをやって生きようと思った」と山洞さんは言う。ネット上で、子どもを持つ市内の世帯を対象に、配達を希望する世帯を募り、当初は農家から寄贈してもらった白菜などの野菜を箱に詰めて各回約10世帯に配った。やったことのない作業とあって、自分の乗用車で効率的に食料を届けて回る「ルート決め」に手間取ったという。ガソリン代は自己負担。知名度がないため、行く先々で不審がられた。配布する食材が不足して苦境に陥ったこともあるが、フードバンクの存在を知って団体登録することで食料の安定的な確保につながった。

100食分の子ども向け弁当を作るボランティアの女性たち(24年2月27日撮影)
無料で提供された春巻きをメーンにした弁当

 コロナ禍でサービス業を中心に雇用不安が広がり、収入が減った家庭で家のローン支払いが厳しくなるなどし、ひとり親家庭だけでなく二人親世帯も家計が厳しいと実感した。

弁当に添えて無料配布する食材を袋に入れるスタッフ

 23年度は宅配を辞め、毎週火曜日午後3時半から活動拠点または市産業会館で手作り弁当(子ども無料)を提供した。ボランティア市民と一緒に弁当の調理を担う母の児玉さんは「子ども食堂は地域活性化になり、人との交流も楽しいので取り組んでいる」と話す。2月27日の活動日には春巻きや煮物を詰めた子ども向け弁当100食を作り、ネット予約をした約45世帯が活動拠点で受け取った。育休中の40歳代女性は「ここで同世代の人たちと子育てに関する情報交換ができ、最高にありがたい」と話していた。

 運営費用は各種補助金に頼っている。23年度の場合、独立行政法人の社会福祉振興助成事業などで1285万円を得た。補助金について各地の子ども食堂運営者からは申請作業が大変すぎて苦痛という声もあるが、山洞さんは「苦に感じるどころか、補助金でどういうことができるかと考えると、ワクワクしてくる」と言う。逆に企業や団体、個人からの寄付金集めは苦手だといい、「補助金を得られなかった場合に今後の活動をどう継続していくかが課題」と語った。24年度は弁当配布を月1回にし、市内の各学区で子ども食堂が増えるようにサポート活動に力を入れる。(24年2月27日取材。文中の年齢は取材時点)

弁当配布の時刻になると大勢の利用者が列をつくった
弁当受け取り時には子どもが遊べるコーナーも

<執筆者プロフィール> 野矢 充(のや・みちる) 滋賀県甲賀市出身。立命館大学法学部卒業後、30年間読売新聞記者。退職後に名古屋市立大学大学院人間文化研究科博士前期課程修了。現在、名古屋市在住。2021年夏からフードバンク愛知のホームページで「子ども食堂レポート」執筆。著書に「ごみ:拾って楽しめ」(日本語版と英語版)、論文に「憲法改正の国民投票に新聞はどう向き合っているか─朝日・毎日・読売の比較から」(名市大大学院紀要に掲載)がある。