子ども食堂取材 こども食堂ラフテル(名古屋市熱田区)
団体名 | こども食堂ラフテル |
開催日時 | 毎月23日。午後3時半頃に弁当が出来次第LINEで予約者に連絡。イベントの場合は別に時間設定する |
場所 | 名古屋市熱田区明野町21の4、天理教本耕分教会駐車場(明野公園南) |
対象者 | 誰でも可。弁当購入・イベント参加ともにLINEで予約必要 |
費用 | 弁当は子ども100円、大人200円。イベント参加料は内容によって異なる |
電話番号 メールアドレス | 090―5100―7565(松原ひふよ代表) kodomolaughtale@gmail.com |
代表 松原ひふよさん
▼里親活動で生じる近隣軋轢を食堂でばん回
名古屋市熱田区の松原悟さん(49)(天理教本耕分教会長)とひふよさん(45)夫妻が2021年11月から毎月23日に、自宅(分教会)の駐車場で弁当を安価で提供する子ども食堂を始めたのは、珍しい理由がある。保護者が病気や死亡、児童虐待などで養育できない子どもを、松原夫妻は15年10月から「里親」として自宅で養育する活動をしており、地域と様々な軋轢が生じるのを懸念して地域融和を目的に子ども食堂を続けているという。
「困窮者支援といった目的ではなかったのですよ」。悟さんは里親活動に地域住民の理解を求めることが、第一の目的だったと話す。天理教機関紙記者をしていた独身時代に、里親を取材する機会があり、里子養育の活動に感銘し、「いつか里親を引き受けてみたい」と思うようになったという。結婚後は2男3女の5人の実子(現在大学1年~小学6年)を授かり、子育てが落ち着いてきたのを機に、夫妻は里子を引き受けた。最初は一人だけだったが、20年には「ファミリーホーム」(小規模住居型児童養育事業)の認定を受け、今は小中学生や保育園児の計6人を養育する。最初からの里子の延べ数は32人にものぼる。
養育には、子どもを温かく見守る住民の目が必要だと感じ、ひふよさんが代表になって地域の回覧板で子ども食堂開設を知らせ、1回100食分の弁当を子ども100円、大人200円で提供し始めた。子育てしやすい地域を目指すことに賛同して住民もボランティアに名乗り出てくれ、常時10人ほどの調理手伝いを得られた。1年目は光熱費など一部費用を自前で補ったが、その後は各種団体から助成金を得られ、収支トントンで運営できている。
ひふよさんは、「細々とでも弁当を提供していければと考えていたが、やっているうちにあれもこれもと手を広げてやりたくなった」と振り返る。22年夏には駐車場で「夏まつり」をやりたいと言い出し、インターネットを介して資金調達する「クラウドファンディング」で実施にこぎつけた。秋の「ハロウィン」には、約100人の子どもたちが仮装して地域を練り歩き、協力を得られた店舗などで菓子や文房具のプレゼントを子どもたちに渡した。
23年4月23日の「春まつり」は、予約した300人が参加する盛況ぶり。子どもは200円、大人は300円の参加費を払うだけで、ラーメンやおにぎり、ドリンク、かき氷、フランクフルト、みたらし団子のすべてを屋台形式で食べられるようにした。ボランティアの協力で、マジックショーなども実施。子どもたちに経済感覚を養ってほしいと考え、手作りアクセサリーなどを持ち寄ってフリーマーケットも開き、子どもたちが売り買いを体験した。近くの小学4年女児は「ここの子ども食堂は、時々祭りをやってくれるのがよい。昨年はハロウィンに参加してみて楽しかったので、また春祭りにも来ました」と笑顔で話していた。
ひふよさんは、新しいことを企画するたびに参加者は集まるのだろうかと心配になったという。だが、予想以上の反響にうれしくなり、「一つのイベントが終わると、次は何をやろうかとすぐに考えるようになった」と笑う。子ども食堂の活動に取り組むことで、悟さんは「子どもたちを見守る目が増えた」と語る。子どもが楽しく過ごせる環境を、地域を巻き込んでつくりたい考えだ。(23年4月21日と23日取材。文中の年齢は取材時点)
<執筆者プロフィール> 野矢 充(のや・みちる) 滋賀県甲賀市出身。立命館大学法学部卒業後、30年間読売新聞記者。退職後に名古屋市立大学大学院人間文化研究科博士前期課程修了。現在、名古屋市在住。2021年夏からフードバンク愛知のホームページで「子ども食堂レポート」執筆。著書に「ごみ:拾って楽しめ」(日本語版と英語版)、論文に「憲法改正の国民投票に新聞はどう向き合っているか─朝日・毎日・読売の比較から」(名市大大学院紀要に掲載)がある。