子ども食堂取材 かがよひ食堂(愛知県岩倉市)
食堂名 | かがよひ食堂 |
開催日時 | 毎月第4土曜日午後5~7時 |
場所 | 岩倉市昭和町1丁目23 おさや糸店2階 コミュニティカフェかがよひ |
対象者 | だれでも利用可。予約しなくても利用できるが、予約を歓迎 |
費用 | 学生までの子どもは無料、大人300円。おかずを届けてくれた人は0円 |
電話番号 | 090―6694―3275(村上代表) |
メールアドレス | kagayohisyokudou@gmail.com |
▼料理を持ち寄って食事提供
広いキッチンがなくても子ども食堂は開ける。それを実践しているのが、岩倉市昭和町の「かがよひ食堂」だ。地域で有名な手芸店「おさや糸店」内の2階喫茶スペース「コミュニティカフェかがよひ」で、第四土曜日の喫茶営業終了後の午後5時~7時に、集まった計約30人の子どもや大人に食事を提供している。約10人いるボランティアスタッフが当日に自宅でおかずを作って持ち寄り、料理の入った鍋や容器をそのままテーブルに並べる。子どもら利用者自身が自分の食べる分だけ料理を小皿にとって、その場で着席して食事をとる。
糸店のオーナー、岸辰夫さん(64)は「この店が多様な活動の拠点になれば」と考え、手芸作品の展示や各種イベント・講座開催の場所を提供してきた。子ども食堂開催もその一環で、2016年4月から、子ども食堂に関心を持つ周囲の大人たちが話し合いの場を数回持った。子ども食堂をするにはキッチンが狭く、メンバーから「一品ずつ料理を持ち寄ればピクニックみたいで面白い」と意見が出て、最初から「料理は持ち寄り」を採用している。
1回目の食堂は16年6月で、約10人が利用し、うち子どもは2人だけだった。同年秋頃には、大人4人だけで食べたこともあるが、「もう辞めよう」という声は出なかった。18年夏の台風時に唯一、開催を中止したことがあるだけだ。新型コロナの感染が拡大した時期もテーブルにパーテーションを置き、休むことはなかった。「皆が困っている時期だからこそ食堂は続けよう」と岸さんが率先した。24年時点で大人と子ども合わせて平均約30人が集まるようになった。餅つきを企画した同年1月には、過去最高の約60人が参加した。
22年春から4代目代表を務めている村上太志さん(45)(北名古屋市在住)は、給食センター調理員とあって食育に関心があり、食堂創設時から活動に参加した。大手製パン会社やパン屋に勤めた経験もあり、子ども食堂にはケーキやマカロン、アップルパイなどを作っていくこともある。「以前は自分の作った洋菓子の写真をSNSで発信して満足していたが、食堂で皆から『おいしい』と生の感想を聞くことができ、楽しさが増した」と話す。
村上さんが描いたヒツジのイラスト入りTシャツをネット販売し、子ども食堂ののぼりも作って開催日には入り口に立てている。24年3月には県内のシンガーソングライターたまぽんさんに依頼して食堂のテーマソングを作ってもらった。ユーチューブで披露して食堂をPRしているほか、食堂開催日に歌をCDで流して食事中のBGMにしている。
5月25日の開催日には、ビーフストロガノフやオニオンリングなど6種の料理が並んだ。約30人の利用者とボランティア6人が参加。30歳代女性は「インスタグラムでここを知った。入りやすい雰囲気です」と話していた。各自の食材費用はレシートと引き換えに食堂の会計から出すが、請求しないスタッフもいる。岸さんも場所代や水道・光熱費を請求しない。「スタッフが無償で動いているのに取れないよ」と話す。村上さんは「ゆくゆくは開催頻度を増やしたい」と抱負を語った。(24年5月25日取材。文中の年齢は取材時点)
<執筆者プロフィール> 野矢 充(のや・みちる) 滋賀県甲賀市出身。立命館大学法学部卒業後、30年間読売新聞記者。退職後に名古屋市立大学大学院人間文化研究科博士前期課程修了。現在、名古屋市在住。2021年夏からフードバンク愛知のホームページで「子ども食堂レポート」執筆。著書に「ごみ:拾って楽しめ」(日本語版と英語版)、論文に「憲法改正の国民投票に新聞はどう向き合っているか─朝日・毎日・読売の比較から」(名市大大学院紀要に掲載)がある。